駆逐艦神風と米潜水艦ホークビルとの一騎打ち
駆逐艦春風について完成報告をしたところで、しばらく話がそれていたのですが、春風姉妹の長女の神風には
壮絶な、米潜水艦との一騎打ちのエピソードがあるので紹介します。

神風は神風型1番艦で神風2代目に当たります。峯風型の後継、睦月型の前型に当たり開戦当時は既に相当の老朽艦になっていました。ソロモン、ガダルカナル、ペナン島沖海戦などで奮戦していましたが、後半は輸送船の護衛が主な任務になっていました。
大戦の末期、1945年(昭和20年)7月 神風は特設掃海艇3隻とともに輸送船3隻を護衛してシンガポールを出発しました。
この時動ける駆逐艦は神風1隻になっていたので、米軍司令部はまず邪魔な護衛艦を排除すべく、輸送船団の護衛駆逐艦を襲撃せよという異例の命令を米潜水艦ホークビル(SS-366)にしていました。

ホークビルはマレー半島テンゴール岬沖合で待ち構えていました。
そして南から船団のマストが見えてきました。
一方、神風も電探で潜水艦を探知していました。
ホークビルは艦首発射管より6本の魚雷を扇型に発射、しかし、ソナー等により探知していた神風はこれを回避し、逆にホークビルの方に向かってきました。
潜水艦の航行速度では到底逃げ切れず急速に距離が迫りわずか700m。
迫ってきた神風に対して艦尾発射管から3本の魚雷を発射しました。3本は平行に進みその真ん中の1本が神風に向かっています。
しかし、その真ん中の1本は横波の影響で少し進路をずらします。
神風はすかさずその隙間に入り込みぎりぎりで魚雷を回避しました。1本は左舷わずか2-3mのところをかすめ、後の2本は右舷を過ぎ去っていきました。
ところで以前、雪風、天津風のコーナーで紹介した本「雪風ハ沈マズ」では
雪風が潮岬沖で米潜水艦に雷撃を受け、当初操艦ミスから魚雷に横合いになる面舵をとったものの魚雷に正対する方が回避できるということで、すぐに取舵を取り直し、正対することで魚雷を回避するいうエピソードがあります。
艦首に向かっている魚雷に対しては真っすぐに向かう方が造波理論によって艦首に盛り上がる艦首波と水の抵抗によって左右どちらかにそれるものだという記述があります。
雪風と天津風のエピソードはこちら
↓
雪風と天津風エピソード
神風の逆襲
神風はまだ浮上しているホークビルに対して40mm機関銃で銃撃。ホークビルも砲撃を覚悟しましたが、急速注水を行い艦尾から潜航し海底に着底します。
神風は馬乗りになり爆雷を投下します。水深は浅く、今度はホークビルが何度もやられるかという覚悟をしましたが、損傷はあったものの沈没につながる有効打撃がありませんでした。
神風は水面に浮かんできた木片などから撃沈確実と判断し、また唯一の船団護衛駆逐艦であることからその場を離れ船団護衛に復帰し、ホークビルは九死に一生を得ました。
復讐のホークビル
その後、ホークビルは4隻の潜水艦とともにウルフパック(狼群戦術)を用い、神風を護衛とした船団を7度襲撃します。
神風自身も4度、16本の魚雷攻撃を受けましたが全て回避しました。
神風は終戦まで生き延び、戦後は復員船として従事しますが、海防艦国後座礁の救出中自らも頓挫、放棄された後天寿を全うしました。
エピソード
戦後、ホークビル(の艦長スキャンランド)は神風(当時艦長春日さん)に対し「最も熟練した駆逐艦艦長」と賛辞を送り、技術的な内容についての手紙のやり取りを行ったそうです。あの時沈めなくて良かった・・・春日元艦長の言葉です。

「旧式ですって!駆逐艦の実力はスペックじゃないのよ!」
ってセリフよく分かります。はい。
こう見ると神風も一層凛々しく見えますね
駆逐艦春風について完成報告をしたところで、しばらく話がそれていたのですが、春風姉妹の長女の神風には
壮絶な、米潜水艦との一騎打ちのエピソードがあるので紹介します。

神風は神風型1番艦で神風2代目に当たります。峯風型の後継、睦月型の前型に当たり開戦当時は既に相当の老朽艦になっていました。ソロモン、ガダルカナル、ペナン島沖海戦などで奮戦していましたが、後半は輸送船の護衛が主な任務になっていました。
大戦の末期、1945年(昭和20年)7月 神風は特設掃海艇3隻とともに輸送船3隻を護衛してシンガポールを出発しました。
この時動ける駆逐艦は神風1隻になっていたので、米軍司令部はまず邪魔な護衛艦を排除すべく、輸送船団の護衛駆逐艦を襲撃せよという異例の命令を米潜水艦ホークビル(SS-366)にしていました。

ホークビルはマレー半島テンゴール岬沖合で待ち構えていました。
そして南から船団のマストが見えてきました。
一方、神風も電探で潜水艦を探知していました。
ホークビルは艦首発射管より6本の魚雷を扇型に発射、しかし、ソナー等により探知していた神風はこれを回避し、逆にホークビルの方に向かってきました。
潜水艦の航行速度では到底逃げ切れず急速に距離が迫りわずか700m。
迫ってきた神風に対して艦尾発射管から3本の魚雷を発射しました。3本は平行に進みその真ん中の1本が神風に向かっています。
しかし、その真ん中の1本は横波の影響で少し進路をずらします。
神風はすかさずその隙間に入り込みぎりぎりで魚雷を回避しました。1本は左舷わずか2-3mのところをかすめ、後の2本は右舷を過ぎ去っていきました。
ところで以前、雪風、天津風のコーナーで紹介した本「雪風ハ沈マズ」では
雪風が潮岬沖で米潜水艦に雷撃を受け、当初操艦ミスから魚雷に横合いになる面舵をとったものの魚雷に正対する方が回避できるということで、すぐに取舵を取り直し、正対することで魚雷を回避するいうエピソードがあります。
艦首に向かっている魚雷に対しては真っすぐに向かう方が造波理論によって艦首に盛り上がる艦首波と水の抵抗によって左右どちらかにそれるものだという記述があります。
雪風と天津風のエピソードはこちら
↓
雪風と天津風エピソード
神風の逆襲
神風はまだ浮上しているホークビルに対して40mm機関銃で銃撃。ホークビルも砲撃を覚悟しましたが、急速注水を行い艦尾から潜航し海底に着底します。
神風は馬乗りになり爆雷を投下します。水深は浅く、今度はホークビルが何度もやられるかという覚悟をしましたが、損傷はあったものの沈没につながる有効打撃がありませんでした。
神風は水面に浮かんできた木片などから撃沈確実と判断し、また唯一の船団護衛駆逐艦であることからその場を離れ船団護衛に復帰し、ホークビルは九死に一生を得ました。
復讐のホークビル
その後、ホークビルは4隻の潜水艦とともにウルフパック(狼群戦術)を用い、神風を護衛とした船団を7度襲撃します。
神風自身も4度、16本の魚雷攻撃を受けましたが全て回避しました。
神風は終戦まで生き延び、戦後は復員船として従事しますが、海防艦国後座礁の救出中自らも頓挫、放棄された後天寿を全うしました。
エピソード
戦後、ホークビル(の艦長スキャンランド)は神風(当時艦長春日さん)に対し「最も熟練した駆逐艦艦長」と賛辞を送り、技術的な内容についての手紙のやり取りを行ったそうです。あの時沈めなくて良かった・・・春日元艦長の言葉です。

「旧式ですって!駆逐艦の実力はスペックじゃないのよ!」
ってセリフよく分かります。はい。
こう見ると神風も一層凛々しく見えますね
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