ビスマルク追撃戦(ライン演習)とドイツ戦艦のコンセプトのお話
前回、ドイツ戦艦の系譜について簡単にまとめました。
ドイツ戦艦の系譜
↓
ドイツ戦艦の系譜
ドイツ軍艦の代表といえば何といっても
「戦艦ビスマルク」!
戦艦ビスマルクと言えば、その最初で最期の出撃になる
「ライン演習作戦」
そこで戦艦ビスマルクは劇的な勝利!そして、絶望的な戦闘での沈没となるのです。

戦艦ビスマルク かっこいいーですよね。

※KKベストセラーズ 世界史人vol8 第二次世界大戦ヨーロッパ決戦大図解参照
<超ざっくり ライン演習作戦経緯>
太字のところだけを読めばざっくり経緯の説明になるかと思います。
1941年5月19日グディニア(当時はゴーテンハーフェンと呼ばれた、現在のポーランド国内の都市)出港、5月27日ビスマルク沈没
作戦の目的:通商破壊
ドイツ参加艦:戦艦ビスマルク、重巡洋艦プリンツ・オイゲン
イギリス参加艦(主な艦):戦艦プリンスオブウェールズ、戦艦フッド、重巡洋艦ノーフォーク、サーフォーク、空母ヴィクトリアス、空母アークロイヤル、戦艦キング・ジョージ五世、戦艦ロドネー、重巡ドーセットシャー、駆逐艦多数など

プリンツ・オイゲン 世界史人Vol9参照以下写真同じ
経緯
・5月18日 ゴーテンハーフェンをビスマルクとプリンツオイゲン出発
途中ノルウェーのベルゲンに立ち寄る
・アイスランドの北を大きく迂回し、デンマーク海峡に向かう。
・5月24日イギリス重巡サーフォークは両艦を発見。ストーカーの様に追尾する。特にサーフォークのレーダーは最新式で13カイリ先でも区別できるほど優秀だった。
<デンマーク海峡海戦>
・5月27日、戦艦フッド、プリンス・オブ・ウェールズと両艦は戦闘開始約20kmの距離を介して砲撃戦になる。
ビスマルク達にとってはT字有利!逆にイギリス戦艦にとってはT字不利になり前部砲塔しか使えない状況。
ビスマルクの5斉射目で戦艦フッドの弾薬庫に命中!巨大な火柱とともに船体が真っ二つになって轟沈した!

戦艦フッド
又、ドイツ両艦によって甚大な被害を受けたプリンスオブウェールズは逃げ去る。
しかし、ビスマルクもこの戦闘でプリンスオブウェールズの砲弾3発を受ける。特にその1発は艦の腹を貫きボイラー2基を使用不能にし、燃料1000トンを使用不可にした。
プリンツ・オイゲンは任務継続、戦艦ビスマルクは単艦フランスへの帰路を目指す。
<ビスマルク追撃戦>
空母ヴィクトリアスから飛び立ったソードフィッシュが魚雷1発を命中させる。大した被害なし
途中、見失うが北アイルランドを飛び立ったカタリナ飛行艇が再発見。
北アフリカ方面からH部隊空母アークロイヤル、戦艦レナウンが出撃。
ビスマルクの足を止めるために出撃した空母アークロイヤルのソードフィッシュ隊の魚雷が不運にもビスマルクの舵を取り舵のまま固定させる。
速度を出せないまま北西に向かう。
一晩中寝かせない!イギリス第四駆逐隊の攻撃
イギリス第四駆逐隊の駆逐艦5隻が一晩中肉薄!大した戦果はなかったが、ビスマルクは一晩中の戦闘で寝る暇もない。
イギリス戦艦ロドネーとキング・ジョージ五世の砲撃でボコボコに!
5月27日朝、戦艦ロドネーとキング・ジョージ五世が補足、攻撃を開始する。
距離22キロで砲撃戦開始。ロドネーの砲弾1発が1番主砲アントンと2番主砲ブルーノの間に命中し、両砲塔とも使用不可に。
ついで3番主砲ツェーザルにキングジョージ五世の砲弾が直撃、貫通はしなかったものの使用不可。
最期にロドネーの砲弾が砲塔バーベット部分を貫通。弾薬庫に注水し使用不可に。
この戦闘で戦艦ロドネーは魚雷12発を発射。一発命中。
<戦艦ロドネーは大戦中戦艦同士の戦いで魚雷を命中させた唯一の戦艦という記録を作る>
計400発もの砲撃を浴びせられてボコボコに。
ビスマルクはキングストン弁を開いて自沈。最後はドーセットシャーの魚雷3発でとどめをさされました。
この戦いで個人的にいくつか興味深い点があります。

①同じような形でまとめたドイツ艦
デンマーク海峡戦で当初、フッドとプリンス・オブ・ウェールズ(POW)は、当初、間違ってプリンツ・オイゲンを狙って打ちます。
これはドイツ戦艦、巡洋艦が結構形が似ている為の欺瞞効果がうまくいったと言えます。
同様の形態だと作りやすいというのもあったのかも知れません。
⇒ドイツ軍艦、特にビスマルク級、シャルンホルスト級、アドミラルヒッパー級はお互いを見間違える様に意図的に似せて造ったようです。
②ドイツ戦艦の砲撃コンセプト

ドイツ戦艦はその主戦場は霧が多く視界の悪い北海やバルト海になると考えられていました。
その為に主として近距離戦を想定し初速の速く、命中精度が高く、装甲貫通力に優れた高初速弾砲を用いていました。
それは、緒戦のフッド、POWとビスマルクの砲撃戦でいち早くフッドに命中させたことからも、砲撃戦が20km前後で始まっていることからも正しかったと言えるかも知れません。
日本のできるだけ遠くから砲撃するという特に大和の思想と異なっていますよね。
面白い点です。
でも、イギリスの戦艦キング・ジョージ五世はレーダー射撃も行っており、すでに視界がすべてでは無くなってきていました。
③戦艦装甲の違い

従来の海戦では砲弾が艦の側面しか当たらなかったので、ビスマルクは水上の装甲は強固にしていました。
従って、近距離での砲撃戦ではかなりの防御力を持っていたと言えます。
しかし、大砲の射程が長距離化すると水面下の装甲も重要になってきました。
同時に上方からの砲撃も多くなってきます。
その部分には不安が残る構造でした。
すなわち遠距離での砲撃による防御性はやや劣るものでした。
バイタルパート(重要防御区画)が装甲の上に一部ありますし、軽量化を意図してか水平甲板装甲も薄くなっています。
こういったことが、主砲がいち早く使用不可になった理由に繋がっているのかも知れません。
対してキング・ジョージ五世の装甲は、バイタルパートも装甲で覆っていました。
しかし、イギリス戦艦が一様に優れていた訳ではありません。
巡洋戦艦フッドはビスマルク以前の最大の戦艦で世界一周するほどのイギリス戦艦の顔(だからフッドを沈めたビスマルクをイギリスは許せなかった)だったものの、例え改修をしていてもユトランド以来の巡洋戦艦の装甲の弱さがもろに出ての爆沈でした。
最期に主砲に関しては、ビスマルクの主砲が38cm砲。
ロドネーはビッグセブンのひとりだけあって、40.6cm砲、ロンドン条約の縛りを受けているキング・ジョージ五世とその2番艦POWは36cm砲になります。
ビスマルクがちゃんと動ければ最後の海戦もここまで一方的にならなかったかも知れませんが、そもそも舵がやられなければフランスに逃げ切ることができたかも知れません。
てなことで今回はここまでです。
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ドイツ軍艦の代表といえば何といっても
「戦艦ビスマルク」!
戦艦ビスマルクと言えば、その最初で最期の出撃になる
「ライン演習作戦」
そこで戦艦ビスマルクは劇的な勝利!そして、絶望的な戦闘での沈没となるのです。

戦艦ビスマルク かっこいいーですよね。

※KKベストセラーズ 世界史人vol8 第二次世界大戦ヨーロッパ決戦大図解参照
<超ざっくり ライン演習作戦経緯>
太字のところだけを読めばざっくり経緯の説明になるかと思います。
1941年5月19日グディニア(当時はゴーテンハーフェンと呼ばれた、現在のポーランド国内の都市)出港、5月27日ビスマルク沈没
作戦の目的:通商破壊
ドイツ参加艦:戦艦ビスマルク、重巡洋艦プリンツ・オイゲン
イギリス参加艦(主な艦):戦艦プリンスオブウェールズ、戦艦フッド、重巡洋艦ノーフォーク、サーフォーク、空母ヴィクトリアス、空母アークロイヤル、戦艦キング・ジョージ五世、戦艦ロドネー、重巡ドーセットシャー、駆逐艦多数など

プリンツ・オイゲン 世界史人Vol9参照以下写真同じ
経緯
・5月18日 ゴーテンハーフェンをビスマルクとプリンツオイゲン出発
途中ノルウェーのベルゲンに立ち寄る
・アイスランドの北を大きく迂回し、デンマーク海峡に向かう。
・5月24日イギリス重巡サーフォークは両艦を発見。ストーカーの様に追尾する。特にサーフォークのレーダーは最新式で13カイリ先でも区別できるほど優秀だった。
<デンマーク海峡海戦>
・5月27日、戦艦フッド、プリンス・オブ・ウェールズと両艦は戦闘開始約20kmの距離を介して砲撃戦になる。
ビスマルク達にとってはT字有利!逆にイギリス戦艦にとってはT字不利になり前部砲塔しか使えない状況。
ビスマルクの5斉射目で戦艦フッドの弾薬庫に命中!巨大な火柱とともに船体が真っ二つになって轟沈した!

戦艦フッド
又、ドイツ両艦によって甚大な被害を受けたプリンスオブウェールズは逃げ去る。
しかし、ビスマルクもこの戦闘でプリンスオブウェールズの砲弾3発を受ける。特にその1発は艦の腹を貫きボイラー2基を使用不能にし、燃料1000トンを使用不可にした。
プリンツ・オイゲンは任務継続、戦艦ビスマルクは単艦フランスへの帰路を目指す。
<ビスマルク追撃戦>
空母ヴィクトリアスから飛び立ったソードフィッシュが魚雷1発を命中させる。大した被害なし
途中、見失うが北アイルランドを飛び立ったカタリナ飛行艇が再発見。
北アフリカ方面からH部隊空母アークロイヤル、戦艦レナウンが出撃。
ビスマルクの足を止めるために出撃した空母アークロイヤルのソードフィッシュ隊の魚雷が不運にもビスマルクの舵を取り舵のまま固定させる。
速度を出せないまま北西に向かう。
一晩中寝かせない!イギリス第四駆逐隊の攻撃
イギリス第四駆逐隊の駆逐艦5隻が一晩中肉薄!大した戦果はなかったが、ビスマルクは一晩中の戦闘で寝る暇もない。
イギリス戦艦ロドネーとキング・ジョージ五世の砲撃でボコボコに!
5月27日朝、戦艦ロドネーとキング・ジョージ五世が補足、攻撃を開始する。
距離22キロで砲撃戦開始。ロドネーの砲弾1発が1番主砲アントンと2番主砲ブルーノの間に命中し、両砲塔とも使用不可に。
ついで3番主砲ツェーザルにキングジョージ五世の砲弾が直撃、貫通はしなかったものの使用不可。
最期にロドネーの砲弾が砲塔バーベット部分を貫通。弾薬庫に注水し使用不可に。
この戦闘で戦艦ロドネーは魚雷12発を発射。一発命中。
<戦艦ロドネーは大戦中戦艦同士の戦いで魚雷を命中させた唯一の戦艦という記録を作る>
計400発もの砲撃を浴びせられてボコボコに。
ビスマルクはキングストン弁を開いて自沈。最後はドーセットシャーの魚雷3発でとどめをさされました。
この戦いで個人的にいくつか興味深い点があります。

①同じような形でまとめたドイツ艦
デンマーク海峡戦で当初、フッドとプリンス・オブ・ウェールズ(POW)は、当初、間違ってプリンツ・オイゲンを狙って打ちます。
これはドイツ戦艦、巡洋艦が結構形が似ている為の欺瞞効果がうまくいったと言えます。
⇒ドイツ軍艦、特にビスマルク級、シャルンホルスト級、アドミラルヒッパー級はお互いを見間違える様に意図的に似せて造ったようです。
②ドイツ戦艦の砲撃コンセプト

ドイツ戦艦はその主戦場は霧が多く視界の悪い北海やバルト海になると考えられていました。
その為に主として近距離戦を想定し初速の速く、命中精度が高く、装甲貫通力に優れた高初速弾砲を用いていました。
それは、緒戦のフッド、POWとビスマルクの砲撃戦でいち早くフッドに命中させたことからも、砲撃戦が20km前後で始まっていることからも正しかったと言えるかも知れません。
日本のできるだけ遠くから砲撃するという特に大和の思想と異なっていますよね。
面白い点です。
でも、イギリスの戦艦キング・ジョージ五世はレーダー射撃も行っており、すでに視界がすべてでは無くなってきていました。
③戦艦装甲の違い

従来の海戦では砲弾が艦の側面しか当たらなかったので、ビスマルクは水上の装甲は強固にしていました。
従って、近距離での砲撃戦ではかなりの防御力を持っていたと言えます。
しかし、大砲の射程が長距離化すると水面下の装甲も重要になってきました。
同時に上方からの砲撃も多くなってきます。
その部分には不安が残る構造でした。
すなわち遠距離での砲撃による防御性はやや劣るものでした。
バイタルパート(重要防御区画)が装甲の上に一部ありますし、軽量化を意図してか水平甲板装甲も薄くなっています。
こういったことが、主砲がいち早く使用不可になった理由に繋がっているのかも知れません。
対してキング・ジョージ五世の装甲は、バイタルパートも装甲で覆っていました。
しかし、イギリス戦艦が一様に優れていた訳ではありません。
巡洋戦艦フッドはビスマルク以前の最大の戦艦で世界一周するほどのイギリス戦艦の顔(だからフッドを沈めたビスマルクをイギリスは許せなかった)だったものの、例え改修をしていてもユトランド以来の巡洋戦艦の装甲の弱さがもろに出ての爆沈でした。
最期に主砲に関しては、ビスマルクの主砲が38cm砲。
ロドネーはビッグセブンのひとりだけあって、40.6cm砲、ロンドン条約の縛りを受けているキング・ジョージ五世とその2番艦POWは36cm砲になります。
ビスマルクがちゃんと動ければ最後の海戦もここまで一方的にならなかったかも知れませんが、そもそも舵がやられなければフランスに逃げ切ることができたかも知れません。
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