「失敗の本質 日本組織論的研究」 中公文庫に見るミッドウェー作戦 その2
始めに
本来ですと、「失敗の本質」全体を通じて、日本軍が本来なら軍という合理的でなければならない組織が行ってきた事実を通じて
その失敗は何が要因であったのか?
それを各個人に向けて、読み取ることで本書の意味を持つのだと思います。
累計で65万部も売れている意味は、もちろん会社経営に組織運営の意味でも生かせるのではということもあるでしょうし
更に個人に置き換えた時に数々の失敗の原因に立ち帰り今後の行動指針の一つにするのも良しと言う応用性かも知れません。
この「失敗の本質」から読み取れることを要約した本も販売されています。
このブログでは、失敗の本質の読み取れる意味ではなく、単に内容を要約しています。
その中で各自意味を読み取るのみ良し、ミッドウェー海戦における状況理解でも良しかなと思っています。
それでは要約の続きです。
<前回の記事内容>
①「失敗の本質」における全体の構成
②その中でミッドウェー海戦における日本軍の目的とシナリオ
を要約しました。
前回の記事はこちら
↓
失敗の本質 概要と日本海軍のシナリオ
「米海軍のシナリオ」
※印は失敗の本質文章中にはありませんが、他の文献などからの捕捉情報です。
米海軍は基本シナリオとして、主力艦隊を西太平洋に進出させて艦隊決戦を行う計画でした。
しかし、ハワイ奇襲の被害がことの他多かった事、ヨーロッパと太平洋の2正面に同時対処しなければならなくなった事で序盤は太平洋方面で積極的作戦が取れなくなりました。
※ルーズベルトとチャーチルの交渉の結果、チャーチルは米軍の主体をヨーロッパに置くことをルーズベルトに認めさせました。その配分比率は概ね大西洋7に対して太平洋3でした。
<劣勢が分かっていた米海軍>
米海軍は開戦後に太平洋から回した空母1隻を足しても、空母4隻という状況でした。
又、日本海軍がどこかで積極的な作戦に出てくることも予想されていました。
ここで、劣勢な米国海軍にとって強い力になったのは暗号解読でした。
※米軍は暗号解読を一つの重要テーマと捉え、ステーション・ハイポという暗号解読部隊をハワイに組織していました。
そのリーダーはジョセフ・ロシュフォート中佐という奇才でした。
そこで日本海軍で最も用いられる「海軍暗号書D」と言われる暗号を5月26日までにほとんど解読されていました。
太平洋艦隊ニミッツ司令長官は、日本海軍の艦長が知っている程度の情報は既につかんでいました。
これらの情報を正確に入手していた事が、米軍の勝利に大きく貢献したのですが、当時の米軍としては劣勢な米軍が不可避な惨事を事前にしっていた様なものだったと言います。
ミッドウェーは戦略拠点として、絶対手放すことのできない場所でした。
更に珊瑚海海戦で「空母 ヨークタウン」を損傷しその修理には3カ月を要すると見られていました。
当時、回せる空母はエンタープライズとホーネットの二隻しかなかったのです。
<米海軍の驚異的な緊急時対応能力>
ニミッツ長官はヨークタウンの修理を3日で終わらせるように命じ、実行しました。
※実際、ヨークタウンの修理を3日で行った背景には非常に発達した米軍のダメージコントロール能力(通称ダメコン)の高さと合理的思考に伴う、修理能力と工業力という背景がありました。
※ニミッツ長官が3日で修理する様に命じた時、事前に飛行機でヨークタウンに修理責任者が飛び、状況を確認。1か月もあれば、新品同様に修理可能、3日で作戦参加能力が可能であると見積もっていました。
※ヨークタウンが真珠湾についた時には応急修理能力により、既に爆撃の後さえ分からないくらい修理され、30ノットを出すことも可能になっていました。
そして、真珠湾の海軍工廠では1400名の作業員が昼夜交代体制で修理できる体制もできていました。
同様に珊瑚海海戦で中破した翔鶴が参戦できなかったのと対照的です。
<米海軍の作戦シナリオ>
米海軍のシナリオは次の通りです。
①ミッドウェー島からの哨戒索敵を厳重にし、日本空母からの空襲が行われる前に日本空母を撃破する。
②空母部隊は、日本軍の索的範囲外に待機し、ミッドウェー航空隊により動静が判明次第、空母部隊を進出させ、日本空母部隊を奇襲する。
米軍の不利な点
・米軍は戦力的に劣勢、練度が不足
有利な点
・根拠地が近く、不沈空母ミッドウェーを要している。
・日本軍の作戦全貌を理解している
・レーダー、無線通信能力に優れている。
※米軍の採った行動をまとめると
・彼我の有利点と不利点を理解し、
・事前に情報入手が重要として、組織的に実行に移し
・適時集中して緊急事態に対応し
・その時に集中しうる全戦力を投入。
ここまでは有利に展開してきた日本軍、劣勢な中なんとか挽回したい米軍のそれぞれの思惑が錯綜している中での展開になっています。
次回、海戦の経過と主要人物の思惑です。
ぽちっとお願いします。励みになります。
↓( ̄^ ̄)ゞ
始めに
本来ですと、「失敗の本質」全体を通じて、日本軍が本来なら軍という合理的でなければならない組織が行ってきた事実を通じて
その失敗は何が要因であったのか?
それを各個人に向けて、読み取ることで本書の意味を持つのだと思います。
累計で65万部も売れている意味は、もちろん会社経営に組織運営の意味でも生かせるのではということもあるでしょうし
更に個人に置き換えた時に数々の失敗の原因に立ち帰り今後の行動指針の一つにするのも良しと言う応用性かも知れません。
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![]() 「超」入門失敗の本質 [ 鈴木博毅 ] |
このブログでは、失敗の本質の読み取れる意味ではなく、単に内容を要約しています。
その中で各自意味を読み取るのみ良し、ミッドウェー海戦における状況理解でも良しかなと思っています。
それでは要約の続きです。
<前回の記事内容>
①「失敗の本質」における全体の構成
②その中でミッドウェー海戦における日本軍の目的とシナリオ
を要約しました。
前回の記事はこちら
↓
失敗の本質 概要と日本海軍のシナリオ
「米海軍のシナリオ」
※印は失敗の本質文章中にはありませんが、他の文献などからの捕捉情報です。
米海軍は基本シナリオとして、主力艦隊を西太平洋に進出させて艦隊決戦を行う計画でした。
しかし、ハワイ奇襲の被害がことの他多かった事、ヨーロッパと太平洋の2正面に同時対処しなければならなくなった事で序盤は太平洋方面で積極的作戦が取れなくなりました。
※ルーズベルトとチャーチルの交渉の結果、チャーチルは米軍の主体をヨーロッパに置くことをルーズベルトに認めさせました。その配分比率は概ね大西洋7に対して太平洋3でした。
<劣勢が分かっていた米海軍>
米海軍は開戦後に太平洋から回した空母1隻を足しても、空母4隻という状況でした。
又、日本海軍がどこかで積極的な作戦に出てくることも予想されていました。
ここで、劣勢な米国海軍にとって強い力になったのは暗号解読でした。
※米軍は暗号解読を一つの重要テーマと捉え、ステーション・ハイポという暗号解読部隊をハワイに組織していました。
そのリーダーはジョセフ・ロシュフォート中佐という奇才でした。
そこで日本海軍で最も用いられる「海軍暗号書D」と言われる暗号を5月26日までにほとんど解読されていました。
太平洋艦隊ニミッツ司令長官は、日本海軍の艦長が知っている程度の情報は既につかんでいました。
これらの情報を正確に入手していた事が、米軍の勝利に大きく貢献したのですが、当時の米軍としては劣勢な米軍が不可避な惨事を事前にしっていた様なものだったと言います。
ミッドウェーは戦略拠点として、絶対手放すことのできない場所でした。
更に珊瑚海海戦で「空母 ヨークタウン」を損傷しその修理には3カ月を要すると見られていました。
当時、回せる空母はエンタープライズとホーネットの二隻しかなかったのです。
<米海軍の驚異的な緊急時対応能力>
ニミッツ長官はヨークタウンの修理を3日で終わらせるように命じ、実行しました。
※実際、ヨークタウンの修理を3日で行った背景には非常に発達した米軍のダメージコントロール能力(通称ダメコン)の高さと合理的思考に伴う、修理能力と工業力という背景がありました。
※ニミッツ長官が3日で修理する様に命じた時、事前に飛行機でヨークタウンに修理責任者が飛び、状況を確認。1か月もあれば、新品同様に修理可能、3日で作戦参加能力が可能であると見積もっていました。
※ヨークタウンが真珠湾についた時には応急修理能力により、既に爆撃の後さえ分からないくらい修理され、30ノットを出すことも可能になっていました。
そして、真珠湾の海軍工廠では1400名の作業員が昼夜交代体制で修理できる体制もできていました。
同様に珊瑚海海戦で中破した翔鶴が参戦できなかったのと対照的です。
<米海軍の作戦シナリオ>
米海軍のシナリオは次の通りです。
①ミッドウェー島からの哨戒索敵を厳重にし、日本空母からの空襲が行われる前に日本空母を撃破する。
②空母部隊は、日本軍の索的範囲外に待機し、ミッドウェー航空隊により動静が判明次第、空母部隊を進出させ、日本空母部隊を奇襲する。
米軍の不利な点
・米軍は戦力的に劣勢、練度が不足
有利な点
・根拠地が近く、不沈空母ミッドウェーを要している。
・日本軍の作戦全貌を理解している
・レーダー、無線通信能力に優れている。
※米軍の採った行動をまとめると
・彼我の有利点と不利点を理解し、
・事前に情報入手が重要として、組織的に実行に移し
・適時集中して緊急事態に対応し
・その時に集中しうる全戦力を投入。
ここまでは有利に展開してきた日本軍、劣勢な中なんとか挽回したい米軍のそれぞれの思惑が錯綜している中での展開になっています。
次回、海戦の経過と主要人物の思惑です。
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失敗と言う耳の痛い話ではあるけど、見つめ直す意味で大事だと感じている「失敗の本質」に記載されている二つの海戦、ミッドウェー海戦とレイテ沖海戦という2大海戦をまとめようと気軽に書き始めたのですが、要約を書くだけでも結構大変なことが分かりました。しかし、要約をしているだけでも結構おさらいの意味が出ている様に思います。
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